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ナーシングセンター八幡健康エッセイ:第7回「新年を迎えて」

ナーシングセンター八幡 健康エッセイ:第7回「新年を迎えて」

ナーシングセンター八幡健康エッセイ:第7回
「新年を迎えて」

粟生(あおう)修司(ナーシングセンター八幡施設長、九州工業大学名誉教授)

昨年は新型コロナウイルスで非常に大変な1年を過ごしました。検査体制が徐々に充実し、治療法も重症度にあわせた対応が確立してきているようです。まもなくワクチン接種も始まります。この1年がコロナ収束の年になることを願わずにはいられません。コロナウイルスが元気な時は私たちのほうは元気がなくなり、家にじっと籠って耐えていました。ナーシングセンター八幡のご利用者ならびにご家族の皆様には面会が制限されたり、外に出たときはしばらく個室で過ごしていただいたり、いろいろと不自由なことが生じてしまいました。皆様のご協力のおかげでナーシングセンター八幡や八幡厚生病院内でコロナの発生はありませんでした。今年もスタッフ一同「安心安全そして元気な」環境づくりに励んでいきたいと思っております。

さて、新年は、過去・現在・未来を考えてみるいい機会でもあります。実は年を重ねると「悟りやすい」脳環境になることがさまざまな研究からわかってきました。

悟り(洞察・啓示)に至るときは、脳に強い興奮が起きて「てんかん発作」のような状態になるようです。パウロ(新約聖書著者)、モハメッド(イスラム教開祖)、ジャンヌ・ダルク(カトリック教会聖女)、ソクラテス(ギリシアの哲学者)、ユング(精神科医・心理学者)、アインシュタイン(物理学者)、ゴッホ (オランダ画家)、ドストエフスキー(ロシアの文豪)、カエサル(古代ローマの英雄、軍人・政治家)、ナポレオン(フランスの英雄、軍人・政治家)、レーニン(ソビエト連邦建国者)など、多くの有名な宗教人、哲学者、科学者、芸術家、政治家が「てんかん」症状をもち、悟りや啓示を得ています。病気は悪いことばかりではないようです。

宗教家や哲学者は昔から「悟り」・洞察・啓示を得るため、瞑想をしていました。現代社会では世界中の人が瞑想を生活のなかに取り入れています。感情を安定させ、よい体調のもとで、ゆっくりとした呼吸に受動的に意識を集中させるという方法が一般的なやり方です。呼吸を遅くすると酸素供給が減少し、脳細胞が興奮しやすくなります。さらに、節食や断食で血糖値が下がると、脳細胞がさらに興奮しやすくなります。この脳の興奮でひらめきが来るのです。ただし、心身の不調があると混乱状態を起こすことがあるので注意が必要です。禅宗ではそれを「魔境」とよび、修行の時はとくに心身の調子を整え、経験豊かな指導者のもとで瞑想することが勧められています。瞑想は危険な行為でもあるわけです。

歳をとると「てんかん」が起きやすくなります。認知症でも「てんかん」が起きやすくなります。脳出血や脳梗塞で脳のある領域が障害されるとその周囲で興奮しやすいところができ、それが「てんかん」を起こすこともあります。てんかん自体はいろいろと不都合なことも起こすので治療する必要があります。しかし、その一方で、「悟り」・洞察・啓示を得るチャンスが増えることにもなります。

私たち生物は必ず死にゆく運命をもっていますが、安らかで素晴らしい旅立ち方が可能なこともわかってきています。食事量が自然に少なくなり、呼吸も少なくなると、脳細胞が興奮しやすくなり、「悟り」の状態に入りやすくなります。人生が走馬灯のように浮かぶ、懐かしい人が迎えに来る、神仏が見守っている、光のドームのなかを通って行く、などの経験を世界中の臨死体験者が語っています。てんかん様の脳の過剰興奮がこのような現象を引き起こしているものと思われます。つまり、歳を取ると何か特別なことをしなくてもてんかん様の脳の興奮が起きやすくなり、悟りやすくなっているというわけです。ある意味ありがたいことです。

最後にコロナの話に戻りますが、ウイルスや細菌はさまざまな病気を起こす一方で感染した相手に取り込まれて役に立つ働きをし、「共生」をはじめることも知られています。牛が草だけで大きな体になれるのは腸の中の細菌が草を腸が吸収できるように分解してくれるからです。人も腸内細菌と「共生」して、健康維持に重要な役割を果たしています。ウイルスが生物の進化に重要な役割を果たしてきたこともいろいろわかってきています。コロナウイルスともそのうちうまく折り合いをつけられるはずです。ぜひそうなってもらいたいものです。

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