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ナーシングセンター八幡健康エッセイ:第4回「遊びのすすめ」

ナーシングセンター八幡 健康エッセイ:第4回「遊びのすすめ」

ナーシングセンター八幡健康エッセイ:第4回
遊びのすすめ
粟生(あおう)修司(ナーシングセンター八幡施設長、九州工業大学名誉教授)

はじめに
高齢になるほど、いろいろなしがらみから自由になり、欲望からもほどよく自由になり、遊ぶ自由が増えていきます。遊びは人生にさまざまな彩りを与えてくれます。「学校」を意味する英語「school」は、ギリシア語の「余暇」を意味する「schore」に由来しています。古代のギリシア・ローマの市民が音楽、スポーツ、芝居、議論などを楽しむ「暇つぶしの場所」が学校の「起源」であり、現代の私たちの楽しみの多くが生まれました。年をとると「余暇」が増えます。遊びは健康長寿をもたらします。

1.遊びはそれだけで喜びをもたらす。
私たちは「欲しいもの」を得るために努力し、手に入ると、喜びます。努力しても得られないときは、がっかりし、いらいらし、悲しくなったり、怒ったりします。ところが、遊びは「欲しいもの」ではなく、「やりたいこと」です。「何か」を得るためにするわけでなく、遊ぶこと自体がそのまま喜びになります。

2.年をとると遊びやすくなる
仕事や勉強と遊びはしばしば相対するものになります。若いときは「遊んでばかりいないで、仕事(勉強)をしなさい。」と言われたりします。年をとって、仕事から引退すると自由な時間を使って遊んでも文句を言われません。思う存分遊ぶことができます。「健康のために、遊びましょう」と言われたりします。とても恵まれた状況です。現代社会では遊びの選択肢が増えており、遊ぶ機会も増えています。

3.遊び大好き著名人
大人になり、高齢になっても、遊び続けた人は大勢います。有名な宗教人、哲学者、科学者、芸術家や政治家には遊び大好き人間、遊びの名人がたくさんいます。一休、良寛、野口英世、エジソン、キュリー夫人、アインシュタイン、ピカソ、豊臣秀吉、伊藤博文、ケネディ大統領などはとくに「遊び」でも有名で、さまざまなエピソードを残しています。
4.遊びは脳を活性化し、健康長寿をもたらす
遊んでいる時は脳が興奮します。一般的に勉強や仕事中に比べて、遊んでいるときのほうが『やる気』が高まりやすいことが分かっています。遊んでいるときは、やる気や意欲を司る脳内の線条体という部位が、活発に活動しています。この場所は運動を調節する場所でもあり、快感を感じる場所でもあります。まさに、「好きこそものの上手なれ」を実現しているところといっていいでしょう。
遊んでいる時に興奮している場所がもう一か所あります。それが視床下部外側野です。この部位の興奮で、活動性が増し、五感が鋭くなり、運動反応性が上昇し、学習記憶機能が促進し、生体防御機能(免疫能)が増強され、痛みが抑えられ、やる気や快感が生じます。さらに最近、視床下部が老化を調節していることも明らかになりました。動物実験で視床下部神経幹細胞を破壊すると老化が大幅に加速し、通常よりも早く死んでしまい、視床下部神経幹細胞が破壊された脳に、視床下部神経幹細胞を新しく注入すると、老化が遅くなったり若返ったりする結果が報告されています。楽しく遊んでいる人は健康長寿ですが、そのメカニズムが徐々に明らかになっています。

5.遊びすぎには気をつける
「過ぎたるは及ばざるがごとし」と言いますが、遊びすぎには気を付けましょう。パチンコや競輪・競馬などのギャンブルを遊びとして考えている方もおられるかもしれませんが、のめり込んで依存症になると大変です。現在、スマホやパソコンのゲーム、ソーシャルネットワークなどが非常に依存症になりやすいことがわかり、社会問題化しています。ギャンブル、酒・たばこ、買い物、食べ物は依存症の危険があります。依存症になると、しても楽しくないのに、しないと苦しくて耐えられなくなるという「地獄のような状態」に陥ります。むさぼらないこと、のめりこまないことが大事です。

おわりに
「たかが『遊び』」なので、気軽に楽しめばいいのです。しかし、「されど『遊び』」で奥深いものも含まれています。のめり込むと苦しい事ばかりになってしまいます。「天国」にも「地獄」にも連れて行ってくれるのが「遊び」なのかもしれません。苦しくなる遊びに「はまらない」ように気をつけながら遊びを楽しんでください。

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